さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~

誕生日のケーキだから、丁寧に運ぶ必要がある。

誕生を祝う席で箱を開けたら、ケーキがぐしゃぐしゃ、なんてことは、悲しい。

あたしは、母に目で合図を送って、カウンターの中から出た。

「お宅まで、お持ちいたしましょう」

おばあさんは驚いたようすで、
「とんでもないですよ。家は遠いから」
と断ったが、あたしはケーキを持って、黙って店から出た。

おばあさんは後からついてきて、すぐに隣を歩いた。

重そうな買い物袋を一つ、持ってあげようとしたが、おばあさんがあまりに遠慮するので、それはやめておいた。