さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~

「原価率なんか、考えるな!」

手の中の鉛筆を、座卓の上に放り出す。
ピキンと、音がする。

「……でも……」

「バカ野郎、原価率の低い、もうかるケーキを作れってか?俺はもうかるケーキより、うまいケーキを作る」

(もうかるケーキより、うまいケーキだと? 勝手な言い分だ! )

ふつふつと怒りが沸いてきた。

「なに言ってるの。この前、『金がない』なんて言ったのは誰よ?」

「なにいー」
片手を振り上げた。

母が台所から飛んできて、父の後ろから手を押さえる。
「お父さん、やめてよ」