「……僕だけで、満たしたい」

潤一さんは、前を向いたまま言った。

「え?」

「僕だけで、満たすことはできない?」

「……何を?」

ああ、羊みたいに臆病で、ロバみたいに物わかりの悪いあたし。

「君を……」

電車は、駅に着いた。

あたしは、ふわふわした足取りで学校まで歩いた。

その朝のクリスマス・ミサは、心がふるえるほど美しいものだった。