「あのときは、そういう答えしかできなかった。あの後色々考えたりしたんだ」

そんなに気に掛けてくれたなんて。

「もっと、他の答え方があったかもしれないって」

「どんな?」


次の駅に着いた。

5人くらいの人が乗ってきたが、潤一さんとあたしのそばには、だれも来なかった。

ほっとする。


「昨日あげたオルゴール、何か入れた?」

「いいえ、まだ何も」

小さな宝石箱だった。

たとえばピアスなら、5組も並べれば一杯になるくらいのかわいい箱。

曲は何度も聴いたけれども、中に入れるにふさわしいものを思いつかなかった。

「お願いだけど、何も入れないで」