「話したかったから」

どういうことだろう。

「夏のこと、なんて忘れたかもしれないけれど、麻理がピアノのレッスンを受けているとき……」

「はい……」

あたしが泣いてしまった、あのとき。

なんだろう。あのとき?

「妹だって言ったね」

「はい。大事な妹だって言ってくださいました」

忘れもしない。あのとき、実可子ちゃんは僕の妹だと、潤一さんが言った。


潤一さんは黙って前を向いている。

なに? 何ですか? 

あたしの心臓は今にも壊れてしまいそう。