さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~

「昨日は、オルゴールをありがとうございました。とっても素敵で、嬉しかったんです……」

「気に入ってくれてよかった」


ホームに出て、電車を待つ。

寒い。でも、潤一さんといると、体が汗ばむように暑い。

なんだか不思議な気分。


電車が来て乗り込んだ。

早朝だから、席が空いている。

二人で隣り合わせに座ることができた。


「どうして、今朝はミサに?」

潤一さんは例年は参加していない。

「麻理から、パンフレットをもらってきてって、頼まれて」

参加者には賛美歌の歌詞などを書いたプログラムが渡される。

学校の美術部が、毎年趣向を凝らしてデザインするものだ。美術部はあのパンフレット作りのために存在するらしい、なんて噂まである。

「ああ、あのパンフ、いいですものね」

「それに、実可子ちゃんが来るからね」

「え?……」