(……、)


そのまま理性を無視して唇をなぞろうと動く指に、自分自身で戸惑う。



と、隣から剥き出しにされた攻撃的な視線が痛い程に刺さった。


補習一日目に見せたものと同じと取れるそれに、すっと指を離した。

そして、橋本により声を掛けられ顔を上げた彼女は今日も左腕を攫われるように取られ、教室の扉へと進んでいく。


くるり、と振り返った彼女は無邪気に俺に笑いかける。


「先生、一週間ありがとうございます!……、わ!」

「、ん」


とだけ返して、ひらりと手を振る。

引かれた腕に声を漏らす彼女の表情は簡単に想像出来る。きっと眉間に皺を寄せて、文句を並べているに違いない。



ふう、と溜息を。



教室の窓枠に切り取られた四角い窓には、橙と紫が入り混じった空が広がっていた。