春色デイジー

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何と言いますか。
とりあえず目は通してみたものの、全く分からない。


隣に座る卓馬はシャーペンを止めることなく、次から次へと問題を解いているようだ。やはり、テストの日は災難にも腹痛に見舞われていたに違いない。


時計を見上げると、既に15分が経過しようとしている。ちなみに、私は一周目を通したが何も埋まることのない解答欄に悲愴感のようなものを覚えながら、一問目に戻ってきたところだ。

隣の文字が書き込まれていく音と時計の秒針が刻む規則的な音に、酷く焦りを覚える。

何とも言えない焦燥にプリントから少し顔を上げ、ちらりと先生を見る。


と、私の様子に気付いていたのかしっかりと視線がかち合った。


「分かんない?」

「あ、はい」

「どのへん?」


う、と言葉に詰まる。果たしてこれは言ってしまって良いのだろうか。


先生は私を覗き込みながら、返答を待っている。
ええい、言ってしまえ!



「えと、……ぜ、全体的に?」


正直、自分自身何処が分からないのかが分からないのだ。苦手な科目ってこういう事あるよね。


それを聞いて困惑したような呆れたような顔を見せた先生。珍しい表情、だ。盗み見るようにちら、と視線を上げると。


「(おら、授業聞いてなかったのか?)」

「(ひい、すみません……っ!)」


明らかに私の分が悪い、音を成さない無言の会話。