「……mayは助動詞なので続く動詞は原形です。なのでこの文章はIt may rain tomorrow.明日は雨になるかもしれない、という推測の文章になります」

柔らかいわりによく通る先生の耳触りの良い声が、教室内に流れている。


このクラスの英語は、やはり川岸先生に代わって春斗さんだった。しかし、選りによって私の苦手な科目。文系のくせに。

いくらグローバル化が進んでいるからといっても日本に生きている上に、海外に行く予定だってないのに勉強してどうなるんだ?っていうのは苦手な人の屁理屈だとは思うんだけれども。


でも、川岸先生の授業よりも分かりやすい気がするのは気のせいだろうか。苦手な私の言葉が信用に値するかはさて置き。ああ、川岸先生なんだかごめんね。私、別に先生のこと嫌いとかじゃないんだよ。


私だけじゃなくクラスメイトも珍しく居眠りなんてせずに、せっせと黒板の文字をノートに書き写している。何だか異様な光景に見えるのは何故だ。学生の本業は、学問のはずだ、言わずもがな。

と、言っても。毎回テストで壊滅的な点数を打ち出す私にして見れば、分かるも分からないも無いんだけど。ハハハ。