「それじゃ、さよなら」


訪れた解放感と同時に、少しだけ教師という存在を意識したような声色で挨拶をする春斗さん。そこに少しの戸惑いを見つけた。


「また明日、春斗【先生】」


仕返しとばかりに、先生の部分を強調してみた。
案の定、照れたように顔を逸らした春斗さんに、したり顔。


そのまま私に背中を向け、橙の長い廊下に溶けていく。



――――……ブー、ブー、

メッセージの到着を短いバイブレーターの振動が知らせる。


「(や、やばい!)」


時計を確認すると教室を出てから既に30分が経とうとしている。


きっと真子からの、中々帰ってこない私へのお怒りメッセージだ。

慌てて日誌を抱え直し、春斗さんが消えた廊下へと私も走り出した。