春色デイジー

しん、と静まり返った廊下には私達しか居ない。


俯いて西日に伸ばされた先生の影を見つめながら、予測した次の言葉を待つ。


「小さいね、何センチ?」


あ、れ?予想外の展開だ。
聞き間違えかと、顔を上げると首を傾げる春斗さんがいた。

ん、今、何を質問された?用意周到な方だが、臨機応変は苦手。状況が予期せぬものに変わると滅法弱い。


「……えと、何でしょうか?」

「身長だよ。しーんーちょー」


いや、伸ばしてもらわなくても流石に分かるけども!他に、もっとあるでしょう……!


「……153せん、ち」

「へえ、本当にちっさい」


素直に答えている私もどうかと思うが、笑っている春斗さんもどうかと思う。ああ、もうペースが崩される。雪崩れを起こしている。


「普通です」

「いや、小さいね。俺176センチー」

「勝ち誇らないでください、男の人と比べないでください」


む、と春斗さんを睨むと、けらけらと楽しそう。

この前との差に思わず訝しげな視線を向けてしまったが、こっちの方が自然に感じた。