中、見てみたいな。好奇心。
その好奇心に、何度も足を捕られてきたというのに。
この時、私は数分前までの悩みをすっかり頭の片隅に追いやってしまっていた。
不意にがちゃり、という音が閑散とした放課後の廊下に響く。
目の前の教室、英語準備室のドアが開く音。
「……っ」
扉の隙間から現れた人物に焦点を合わせる。思わず息が詰まった。
「あ、花ちゃん」
相手は私の存在を確認すると気さくに声を掛けてきた。
「……ん?花ちゃん?」
ですよね、そうですよね。そう人生上手く行くわけないですよね。分かってます。
戸惑いの色を露わにした春斗さんに、当たり前の反応だよね、と苦い曖昧な笑みを浮かべた。
「高校生だったんだ?」
「見えませんか?」
「いや、見える」
なんだそりゃ。
緊張が解けたように、思わず笑ってしまう。
ただそれすらも、言い訳を見つけるための時間稼ぎに過ぎないんだけども。
考えてみても、全然思いつかない言い訳。空っぽの脳みそを恨みたい。
