いつの間にか雨が止んでいる。
教室の窓から雨上がりの匂いが入ってきた。
「あ、そういえばマスターがまた顔出してって言ってたよ」
最近はあまり姿を見せなくなったが、あそこには真子もよく来る。というか、少し前まで真子もアルバイトをしていた。
「あーおっけー、また行くね。岡さん居ない時教えて」
そう言って言葉とは裏腹に、綺麗に首を傾げた彼女は相変わらず麗しい。そんな彼女は、岡さんのお気に入りだ。真子は何と無く苦手らしいけど。
そして、恐らく岡さんは真子のことが好きなんだと思う。私に対する感情とは違って、ちゃんと女の子として見てる。乙女の勘だけど。……自分で乙女といったことに対して鳥肌立った。
優しくインテリ系な岡さんと、大人っぽい真子はとてもお似合いだと思うんだけどな。
ようやく日誌を書き終え、それを持って立ち上がる。
「日誌、置いてくるね」
ひらひらと手を振った真子を確認して教室を出ると、長い廊下に西日が射し込み橙に染まっている。
