春色デイジー

「釘刺しとく、とか?」

「返り討ちに遭いそうなのですが、」

「じゃあ、お酒で酔わせて弱み握る、とか?」

「それって人間としてどうなの、ってか寧ろ逆に弱み握られそう」


この人、私と同じようなこと考えてないか?……あれ?


と、真顔で双眼に私を映す真子と目が合い、少し怯み気味。


「冗談だって」


そう言って、乾いた笑いを表す真子さん。嘘だ、絶対にウソ。結構本気だったに違いない。


「とりあえず極力関わらないようにするのが、最善策なんじゃない?」

「……だよね、」


私もそう思っていた。ただ、

あの時、春斗さんのことを深く知っているわけではないが、深く踏み入れてしまってはいけない逆に足元を掬われてしまいそうな危険さを孕んでいると感じた。その感覚が、今も妙に引っかかっている。


「そしたら、もしかして見逃してくれるかもだし」

「だったら良いんだけどね」


素直に、うん。と言えなくて、曖昧に言葉を返した私を、真子は不思議そうに覗き込んだ。