春色デイジー



いや、待て。
もしかしたら私は少しばかりの窮地を迎えているのではないか。


体育館の湿度のせいでぼんやりとしていた頭が冴えてきたと同時に、不安が押し寄せてきた。

教室に戻り、自分の席の椅子を引きながら考える。……っち、湿気を含んだ床のせいで椅子の滑りが悪い。


春斗さんとはバイト先で会った訳だ。私がバイトをしていることを知っている。

スクールバックから生徒手帳を取り出す。

校則の欄に太字で記された『アルバイト厳禁』の文字。一応進学校とされているこの高校では、アルバイト禁止というのは周知のものである。している生徒ももちろんいるが、飲食店では断固としてキッチンから顔を出すことはない。皆校則を侵すことは避けたいのだ。それはもちろん、私も同じで……ばれるな、ばれるな。


そう祈ってはみるものの、私がここの生徒だと気付かれるのもきっと時間の問題。


再び雨が降り始めたようだ。ざあ、という音と雨粒が跳ねる音が混ざる。


今日は英語が無いため、一安心。でも、私達のクラスは川岸先生が担当だったから、きっと彼が受け持つはず。