佐伯が慌てて立ち上がるのを見上げながら、自分はまたごろりとコンクリートに寝そべった。

「俺、午後は学科なんすよ。次は準備なんで、もうちょっとしたら戻ります」
「そっか、むらっちゃん学科始めたんだっけ」

 学科担当を希望したのは、一年前。

 二週間ほど前に研修を終え、最近ようやく一人で学科を任されるようになった。

 真面目に授業を聞いていない者もまま居るが、四輪よりは気が楽だ。

 とは言え、学科は学科で、一時限にやらねばならない内容量と50分という制限時間に四苦八苦しているが。

「じゃ、俺先に行くから。あ、さっきの話、誰にも言わないでよ!恥ずかしいから!」

 きゃーハズカシイー、と女子走りで去っていく三十路過ぎの男の後ろ姿を、亮介は何とも言えない表情で見送った。