嘘つきラビリンス

それでも頷かずに済んだのはタイミング良くウエイターが料理を運んでくれたから。


「冷めない内に食べようか」


そんな声に頷くこともなく私はフォークを手にした。


「それと食べながらでいいから仕事の話をしてもいいかな?」


ズルい。


「……どうぞ」


だって、そんな言い方されたら無視すら出来なくなる。


「一応地元優先っていうのは譲れないところがあるから、企業をピックアップしよう。あと向こうさんの意見も聞かないとね。それらを考慮した上で――」


本当に、ズルい男だ。

それが分かってるのに、


「全部纏められたら一度メールでいいからデータ送って。それから課長に提出するといいよ」


彼は先輩として完璧過ぎて、


「はい――」


私は他の選択肢を失ってしまうんだ。