嘘つきラビリンス

「それじゃどうぞ。お姫様」


笑顔と一緒に差し出される手。まるで本当にお姫様みたいな待遇だ。


「こんなのしなくても――、わっ!」


躊躇していると思いっきり引き寄せられる私の身体。


「エスコートくらいさせて。ね?」


そしてスマートすぎるくらいスマートに彼の手は私の腰にあった。


「ねぇ、お姉さんの名前は?」


『お姉さん』

確かに彼から見れば20代半ばの私なんて『お姉さん』だ。

だってよく見れば10代後半って言われても頷けるくらい彼は若い。

でもホストしてるくらいだから二十歳は越えてるんだと思うけど。


「名前無いなら僕がつけちゃうよ?」

「はい?」

「色が白いから雪ちゃん? それとも白ちゃんかな?」


私は犬か!?


「恋羽! 三峰恋羽よ!」


むっとして慌ててそう言うと、彼は吹き出すように笑った。