嘘つきラビリンス

「……なんで?」

「泣きそうな顔してるから」


彼の指先がそっと私の頬を撫でる。


「もしかして当たり?」


男のくせに手入れの行き届いた指先はほんのり暖かい。


「ハズレ」

「あれま」


そう言って彼は舌を出して笑う。


「でも、飲みたい気分かも」


私の言葉に彼は一瞬驚いて、だけどすぐにふわりとした笑顔を見せた。


「なら、一緒に飲む?」


彼から見れば私はいいカモだろう。

でも、


「……いいよ」


今の私はどうでもよくて、そして今持ってるこのお金も全部湯水のように意味もなく使ってしまいたかった。