嘘つきラビリンス

「だから、ただいま。もしかして僕が帰るの待っててくれた?」

「はっ? んなわけっ」

「違うんだ、残念」


そう言いながら微笑むトーマ。

『ただいま』かぁ。

久しぶりに聞いたな、そのフレーズ。

勿論会社ではあったりするけど、自分の家で聞くのは本当にどれくらいぶりだろう?


「……おかえり」


だから、ついそう口にしてしまった。

私の声に靴下を脱いでたトーマの動きが一瞬止まる。

その景色にしまった! って思ったんだけど、別に変なこと言ってないし訂正するのも可笑しい。


「あ、いや、その、挨拶っていうのは人として大事っていうかっ」


慌ててそんな馬鹿なことを口走る私にトーマはいつものふわりとした笑みを見せて、


「うん、ただいま」


もう一度、そう言った。