階段を下りて追いかける?
そう考えてみたけれど、家に鍵をかけてない。
鍵をかけないまま部屋を離れるなんてあり得ない。
スペアの鍵、どこに片付けたっけ?
あるのはあるはずなんだけど。
それを探すだけでも時間がかかりそう。
廊下から下を見る。
するとトーマのふわふわな頭が見えた。
私の視線に気づいたのか、トーマがこっちを見上げて軽く手を振った。
ここは7階で表情まではよく分からないけれど、きっと彼はあのつかみどころのない笑顔なんだろう。
「……今日だけよ、今日だけ」
そう呟いて私も軽く手を上げるとトーマはまた歩き始める。
だから私も部屋に戻ることにした。


