嘘つきラビリンス

「……僕を、騙したの?」

「ちっ、違うてば! 本当に記憶に無くてっ」

「僕が彼女から家を追い出されて可哀想って言ったのも嘘?」

「いやっ! それは――、うん、今聞いても可哀想だと思う! うん」

「うちにおいでって言ってくれたのに……、僕を騙したの?」

「だま!? ちっ、違う! ただ一緒にここに暮らすのは無理だって! 私一人暮らしだし、さすがに男の子と同居なんて――」


パパとママが聞いたら卒倒しちゃう。

必死になって説得しようとする私の前で彼はニコリと笑う。


「あ、それなら大丈夫。弟とかの設定でいいし」

「せ、設定!? なにそれ!」

「ほら、近所の人に聞かれても、僕ちゃんと『姉がいつもお世話になってます』って言うし」

「私に弟なんていないってば!」

「みんなそんなこと気にしてないし、恋羽さんの家族構成なんて誰も覚えてないって」

「そ、それは――」


そうだと思うけど!

そこが問題じゃないのよ!


「普通に考えても昨日あったばかりの男と一緒になんて住めないでしょう!?」