嘘つきラビリンス

するとすぐに黒服が来てお絞りを差し出す。

それを取ったのはトーマと名乗った彼だった。


「はい、どうぞ」

「ありがと……」


まるでドラマのワンシーン。


「飲み物は? 水割り? ロック? うちは珍しくては焼酎なんてのもあるよ」

「珍しいの?」

「多分ね」


そう言いながら手際良くテーブルにコースターや灰皿を置いていく。


「シャンパンとかドンペリは」


聞いたことのある言葉を口にするとトーマは一瞬驚いて、それから吹き出すように笑った。


「勿論あるよ。でもかなり高価――」

「それ頂戴」

「え?」

「お祝いするにはまずシャンパンでしょ?」

「なんの、お祝い……?」


そうだね、きっとこれは……。