嘘つきラビリンス

「僕ね、ここで働いてるの」


でしょうね。

そんな私の心の言葉なんて彼は気にすることなくその煌びやかなドアを開く。


「いらっしゃいませー!」


すると勢いのありすぎる声に思わず後ずさってしまった。

そんな私の上にクスクス笑う声が落ちてくる。


「恋羽さん、こーゆーとこ初めて?」

「……悪い?」


少しムッとしてそう答えると、


「ううん、可愛い」

「なっ!?」


なんて言うから、私はまるで金魚のように顔を赤くしてパクパクするばかりだった。

そんな私なんてお構いなしに彼は私をエスコートしていく。


「5番、新規のお客様、トーマご指名ですー!」

「ありがとうございます!!」


なんか景気のいい焼き肉屋さんとか回るお寿司屋さんに来た気分。


「なに、あれ」

「うーん、合い言葉とかそんなもんだよ」


そう言われながらワインレッドのソファーにゆっくりと座らされた。