嘘つきラビリンス

「 ってかそっちの名前は?」

「そうだったね。僕は朝霧斗真」


そう言って彼が私に差し出したのは真っ黒な紙に金で書き込まれた一枚の名刺。


「あ、今悪趣味だと思ったでしょ?」

「いや、別に……」


思ったけど。

でも思った通り彼はホストで、名刺には『club Night Heaven』って書いてあった。

彼にエスコートされるまま歩くこと5分。


「恋羽さんってOLなの?」

「これでも営業」

「うん、そんな感じ。キャリアウーマンってやつ?」

「嘘ばっかり」

「スーツがよく似合ってるもの。それ、オーダー品でしょ?」

「え? 分かるの?」

「うん。商売柄、そーゆーの分かるの」

「ふーん」


彼との会話は途切れることなく『club Night Heaven』にたどり着くことが出来た。