嘘つきラビリンス

「あははっ、そんなムキにならなくても。でもコハネさんか。漢字は?」

「……なんでもいいでしょ?」


正直、私は自分の名前が好きじゃない。

いつだって「漢字は?」と聞かれる。そして答えるとき必ず「恋愛の恋に羽です」と答えるのが嫌で仕方なかった。


「んー、固いに羽とか?」

「なわけ無いてしょ!? 恋(こい)に羽よ!」


これまた彼に乗せられて勢いで答えると、今度はふわりと柔らかい笑顔を見せる。


「恋の羽? 可愛いね、恋羽さん」


思ってないくせに。

絶対に営業トークだ。

なんせ彼はホストだもの。

こんな誉め言葉なんて日常茶飯事、お茶の子さいさい。

息をするように自然と口から出てくるんだろう。だから、


「どうも」


私も適当に答えておいた。