(こんな高い物買っていただいて…
本当に大丈夫なのかしら?)



私はテーブルの上のスマートフォンを見ながら、なんとも言い難い小さな罪悪感を感じていた。
多分、大金持ちのKEN-Gさんにとったら、こんなもののお金はなんてことないんだろうけど、だからといってこんなに気安くいただいてしまって良かったのか…
でも、変に遠慮をすると、相手の気分を壊すってこともあるにはある。
たとえば、私のレベルで考えるとしたら……誰かにハンカチをプレゼントして、それを遠慮されるようなものなのかしら?
だとしたら、確かに遠慮されても困る…
どうして、この程度のものを素直に受けとってくれないんだろう?って思うだろうな。
そう考えれば、やはり素直に受けとっておくべきなのかとも思うけど、でも、これは私にとっては高価なもの…だからこそ、悩むんだろうな。



考えれば考える程、気持ちは様々に揺らいでわからなくなってくる。
だけど、やっぱり新しい物って素敵。
早く使ってみたい!それに、このカバー…

私は思わずスマートフォンを手に取った。
大人向けっていうのか、とても癒される落ちついた絵柄で、私は一目で気に入ってしまった。
ネックレスに続いてスマートフォンまでお揃いだと、美幸さんが嫌がられないかと少し心配はあったけど、カバーを付けたら全くお揃いには見えない。
美幸さんのは可愛らしいキャラクターのものだから雰囲気がまるで違う。
これならきっと、美幸さんも気にされることはないと思う。



そういえば、スマートフォンの説明書はやけに薄い。
今までの携帯は、ちょっとした辞書並に分厚かったのに…
こんなもので使い方がちゃんとわかるのかどうか心配だけど、お店の人はちっとも難しくないとおっしゃってたし、わからなければ美幸さんにお訊きしよう。
同じ機種だとこういう時に助かる。



新しい携帯に替えた時は、誰に最初に電話をかけたかとか誰からかかって来たかなんてつまらないことがけっこう気になってしまう。
結局、たいていは仕事関係の人だったり、一度なんかは間違い電話だったこともあったな…
今までは最初にかけたい人なんていなかったけど、今回は……青木さんに電話したい…
急ぎのお仕事中に電話なんてかけたらやっぱりご迷惑になるのはわかってるから、かけられないけど……
……だけど、メールなら、大丈夫かもしれない…
今日のこと…一言だけ謝っても良いかしら?
それとも、全く触れない方が良い?

どうにも考えがまとまらず、私は濃いお茶をお茶をすすりながら、ゆっくりと今日の出来事を今一度思い返す。