確かに、見たわけじゃない。
部屋から聞こえて来たお医者さんらしき人の声を聞いただけ。



え?じゃあ、あれはシュウさんじゃなかったの?
別の人のことだったの?
そ、そんな…私、そのことでどれだけ悩み苦しんだことか。
それなのに、命はなんともなくて、坐骨神経痛…??



私は全身のチカラが抜けていくのを感じた。
でも、それって、本当にありがたいことで…



「良かった…ただの神経痛だったんだ……」



嬉しくて涙が込み上げた。
その晩、私はシュウさんに、自分の勘違いのことを話した。



「なんだって?
それじゃあ、俺が死んでしまうから結婚しようと思ったのか?」

「う、うん、シュウさんが死ぬまでにいろいろやってあげたくて。
だけど、何もしてあげられないうちに一年が過ぎてしまって…」

「……馬鹿だなぁ。」

シュウさんは笑いながら、私を抱きしめた。


本当に良かった。
何事もなくて…



「坐骨神経痛のこと、誰にも言うなよ。
特に、カズには。」

声を潜めて言うシュウさんが可愛くて、思わず笑ってしまった。



「なんだよ、笑うことないだろ。」

笑えることが嬉しすぎて、また涙が込み上げた。