「なんだ？食前酒に酔ったのか？」

冷ややかな視線。
怖い、怖いよ。
シュウさん、本気で怒ってる。



「シュウ…美幸ちゃんは本気だって言ってる。おまえはどうなんだ？
美幸ちゃんと結婚する気はないのか？」

「カズさん、馬鹿なことを言わないで下さいよ。
美幸ちゃんと俺は、高見沢を避けるための偽物の恋人同士です。
恋愛感情なんてありません。」



恋愛感情なんてありません。



その言葉が、なぜだか胸に突き刺さった。
なぜだろう？
そんなこと、わかってたことなのに。
どうしてこんなに苦しいんだろう？



「そうか。でも、どうやら、美幸ちゃんはそうではないみたいだな。
一方的な愛か……」

「わ、私、それでも構いません。
愛されなくても良い。
それでも結婚したいんです。」



どうかしてる。
私の言ってることは完全におかしい。
それに、涙が止まらないよ。
私、どうしてしまったんだろう？
シュウさんも兄さんも困った顔をしている。



「シュウ…美幸ちゃんはここまでお前に惚れてるんだ。
どうするんだ？」



その時、料理が運ばれてきた。
めちゃめちゃ、気まずいよ。
私は、俯いて泣き顔を隠すことくらいしか成す術がない。
皆も押し黙ったまま、料理が運ばれてくるのを見守った。