その時、私の脳裏をある事が走り抜けた。



(そういえば、あの話から、もう一年は経ってしまった。
だけど、シュウさんは元気で今もこうしてここにいる。
一体、どうして…?
……まさか!?)



それは、とても恐ろしい考えだった。
何とか、余命は生き延びたものの…でも、今度こそもう無理だと言われて…
それで、高坂さんはシュウさんに人並みの幸せを味わわせたいと思って、それで、結婚のことを言い出したんじゃ…
結婚をシュウさんへの最後のプレゼントとして。



血の気が引いた。
私がぐずぐずしてるうちに、シュウさんの病気は進行してしまったんだ。
シュウさんには、もうわずかな時しか残ってない。



(うっ……)



込み上げる涙を何とか押しとどめた。



「シュウさん…い、いつにしますか?」

「いつって、何がだ?」

「だ、だから、結婚式ですよ!」

「はぁ?何言ってるんだ?」

シュウさんの目が怖い。
完全に怒ってるよ。
でも、こんなことに負けていられない。



「兄さん、私、シュウさんと結婚する。良いよね?」

「え?そ、そりゃあ、お前がそうしたいなら、構わないが…」

「カズまで何を言ってるんだ。
ふざけるのもいいかげんにしろ。」

「わ、私はふざけて言ってるわけじゃない。ほ、本気です!
本気で、シュウさんと結婚したいんです!」

三人の視線が突き刺さる。
でも、ここまで来たらもう引き返せない。
私は唇を噛んで、シュウさんの答えを待った。