「野々村さん、生活費の事なんですが…」

「えっ!?」

「すみません。気が利かなくて。
えっと、俺の小遣いはいくらにしましょうか?」

「せ、生活費だなんて。
ここは家賃はかかりませんし、私には安定したお金もありますから、大丈夫です。」



以前、確かに彼女は言っていた。
両親が家の他に駐車場を残してくれたから、贅沢さえしなければ生活には困らない、と。



「何を言ってるんですか。
俺達は結婚したんですよ。
俺が生活費を払うのは当然のことです。
俺はいくらか小遣いをいただいて、あとは生活費に回して下さい。
あなたの収入は貯金でもしておけば良い。」

「そ、そんな…」



野々村さんは、混乱しているのか、困った顔をして頭を捻っている。
世間の旦那達がどのくらい小遣いをもらってるのかはわからないが、使うとしたら飲み代くらいだ。
結婚したから、前みたいに飲みに行くことはないだろうし…



「えっと、じゃあ、とりあえず小遣いに10万もらって、後をお渡しします。」

「えー、そ、そんな…どうしましょう。
多分、だいぶ余ると思うんですが。」

「余ったら、いざという時のために貯金しといて下さい。」

「あ、そうですね。」

俺は手持ちの金を渡した。
野々村さんは、複雑な表情で、金を見ていた。