「和彦さん、来て下さい!」



ある日、事務所に若い男が来た。
誰だか知らないが、相手は俺の事を知ってるようだ。



「えっと、まだ仕事中なんだが、どこへ?
そもそも君は誰なんだ?」

「来たら分かります、さぁ、早く!」

「あっ!」

男に腕を捕まれ、引きずられるようにして俺は事務所を出た。
外には黒塗りのベンツが停まっていた。



「カズ、急ぐんだ!」

窓から顔をのぞかせたのはシュウだった。
つまり、この若い男はシュウの店のホストだな。
それがわかって、一先ずは安堵した。
俺は後部座席のシュウの隣に座り、若い男は運転席に就いた。
車は滑るように走り出した。



「シュウ、どういうことなんだ?
どこへ行くんだ?」

「それが、まだ良く事情がわからないんだ。
ただ、美咲さんの居場所はわかった。
今からそこへ向かう。」

「えっ!野々村さんの?」



野々村さんの居場所がわかったのはありがたいが、なぜ、こんなに急ぐんだ?
野々村さんの身に、一体、何が?
急に不安な気持ちになって来た。



「野々村さんがどうかしたのか?」

「まだ詳しいことはわからないが、もしかしたら、ショックなことが待っているかもしれない。
一応、覚悟はしとけよ。」

「えっ!?」

不安はさらに大きく広がった。