ちょっと動いただけで息が切れる。
あまり無理は出来ない。
私は、縁側に腰を降ろした。



小さな庭には、手入れもしていないのに、花が咲いていた。
前の住人が植えたものだろうか?
名前はわからないけど、白い可憐な花だった。



ここはたまたまみつけた。
私の家から地下鉄で五駅の古い町屋だ。
空いてまだ二日とか言っていた。
お家賃もそんなに高くないし、私はすぐに決断した。



これからのことはわからないけど、とりあえずはここが拠点になる。



気付いたのは、あの日から三ヶ月くらいした時のことだった。
自分の体の変化が気になり、妊娠検査薬を買ってきた。
そんなことあるわけない。
だけど、現れたのは陽性の結果。
嬉しくて心が震え、涙が零れた。
大好きな人の子供を授かったんだ。
嬉しすぎて、しばらく涙が止まらなかった。



ただ、その反面、辛いこともある。
私がこの子を産むと決めたら、青木さんとは離れないといけない。
青木さんは、あの夜のことは覚えてらっしゃらないし、たとえ覚えてらっしゃったとしても、産むことをお許しにはならないだろう。
この子は私の子。
青木さんに迷惑をかけるつもりはない。
父親のことは絶対に誰にも言わない。
私だけの子供だ。