「し、しかし、野々村さんも全く水臭いな。
それならそうと言ってくれれば良いのに……
あ、そうだ、美幸……オムライスを食べたら、ちょっとでかけよう。
昨夜のおわびに、なんでも好きなものを買ってやる。
ゲームソフトとかフィギュアとか、なにかほしいものはないのか?」

「えっ…本当に!?
じゃ、じゃあ…ゲーム機でも良い?
あ、ゲーム機っていっても大きなやつじゃないよ。
携帯用のやつなんだけど……」

ちょっと言いにくそうに……でも、きらきらと目を輝かせて美幸は俺の誘いに乗ってきた。



やっぱりその手のものか…
年頃の女の子のくせに、服だとかバックだとかアクセサリーとかいう発想はないのか?



「……あぁ、良いぞ。」

俺は、心の中の不満を押さえ、そうとだけ答えた。



「マ、マジ!?
じゃ、じゃあ、ソフトも一緒に買ってくれる?
一枚だけで良いから…!」

美幸はそう言って、どこか怯えたように上目遣いに俺を見る。



こいつ…調子に乗ってやがるな…
だげど……ま、仕方がないか。



「あぁ、わかった、わかった。
ソフトも一緒に買ってやるよ。
昨夜は迷惑かけたからな。」

「やったー!」



まるで子供だ。
ゲーム機とソフトが買ってもらえるとわかると、美幸の表情はさっきまでとはうって変わった。

考えてみれば、こいつには今までこれといったプレゼントもしたことはなかった。
離れて暮らしていたことが原因といえば原因だが、送る気さえあれば送れたはずなのに…

本当ならもっと女性らしいものを買ってやりたい所だが、本人がゲーム機がほしいのなら仕方がない。



(まぁ、良いか…)

なぜだが腹は立たなかった。
先程までの苛々した気持ちも嘘のように消えていたし、時折痛む頭のこともほとんど気にならなくなっていた。