(困ったな……)



青木さんも難しいことを思いつかれたものだ。
私みたいにセンスのない者に、コーディネートを任せるだなんて。
美幸さんも困ってらっしゃるようだ。
美幸さんもこういうことは大の苦手みたいだから。



(あ…あのお店…)



上の階は、下とは違い、オシャレというのか、個性的な服のお店が集まっていそうだった。



「あ、あの…あそこに行ってみませんか?」

私は少し離れた店を指さした。
マネキンが着てる革のジャケットが、すごく青木さんっぽい気がしたから。



「こ、こういう感じはどうでしょう?」

「今日は野々村さんの意見で決めますよ。」

「じゃあ、ちょっと羽織っていただけますか?」

マネキンのすぐ傍にかけられたジャケットを青木さんが羽織られた。
やっぱり、良い。
すごく似合う!



「どうですか?」

「は、はい、すごく良いと思います。」

「じゃあ、一応これは候補にして、下に着るものとパンツをみてみますか?」

「そうですね。
あ…!」

鋲の打たれた黒いロングコートが目に付いた。



「あ、あの…ジャケットの上に、このコートはどうでしょうか?」

「羽織ってみますね。」



わぁ、素敵!
なんだかバンドでもやってる人みたい。
服を試着する青木さんに、私はときめいてしまっていた。