美幸さんとは親しくしていただいてるから、出来るだけ隠し事はしたくない。
だから、青木さんと会ってることも話せてほっとしたけれど、でも、あの晩のことだけは話せない。
これは、私だけの秘密。
墓場にまで持っていく、私だけの宝物。
青木さんが覚えてらっしゃらなくて本当に良かった。
覚えてらっしゃったら…きっと、今の関係性は壊れてしまう。



青木さんにとってはただの遊び、気まぐれだったと思うけど、相手が私だと、きっと悩まれると思う。
私は美幸さんの友達で…
シュウさんやKEN-Gさんの秘密を共有してる仲間で、仕事の関係もある。
だから、きっと気を遣われて、ギクシャクしてしまうと思う。



そうはなりたくない。
いつか、青木さんに好きな人が出来るまで、私は彼女さんの役を続けたい。



『そういえば、野々村さんは兄さんのことをなんて呼んでるの?』



(え??)



あ、そうか。
皆さん、青木さんのことを『カズ』と呼ばれてる。



『「青木さん」のままじゃおかしいでしょうか?』

『そりゃあ、おかしいんじゃない?
皆と同じように「カズ」にするか、「カズ君」とかが良いんじゃない?
それに、野々村さんも「美咲」って呼んでもらわないと。』



えーっ!美咲?
無理よ、そんなの。
恥ずかしくて顔から火が出てしまう。



でも、青木さんに「美咲」って呼ばれたら…
考えただけで、顔から火が出た。