朝の眩しい光に、私は思わず俯いた。
誰も私なんか見てないだろうけど、恥ずかしくて顔が上げられない。
足元を見ながら、私はまだそんなに人気のない通りを足早に歩いていた。
とにかく、早く家に帰りたい。
チラチラと顔をあげ、タクシーを探す。
朝早いせいか、流しのタクシーはなかなか通らない。



(あ!)



やっと走ってきたタクシーを捕まえた。
タクシーの中でも、私は顔を伏せていた。



昨夜のことが、頭を過ぎる。
それを直ぐに振り払う。



(あれは夢……幻覚みたいなものよ。
早く忘れなきゃ!)



家に戻って、すぐにシャワーを浴びた。
あの甘美な夢を忘れ去るために。



全て洗い流して、部屋着に着替える。
いつもの私に戻ったことを、鏡を見て確認し、なんとなくほっとする。



(大丈夫。青木さんはきっと何も覚えてらっしゃらない。
私さえ黙っていたら、それで良い。)



忘れ物は無いはずだ。
私は、あそこには行ってない。
昨夜は、バーで飲んでから別れて、青木さんは酔い潰れたから、ホテルに泊まられただけ。
もちろんひとりで。
私は、ホテルに送って行ったことにしよう。