(え……)



目が覚めた時の状況に、俺は一瞬固まった。



見知らぬここは、おそらくはホテルだ。
ベッドにいたのは、俺だけじゃない。
俺の横には、女性がいた。野々村さんだ。
彼女も俺も何も着ていない。



(どうしよう!?)



俺はすっかりパニックになっていた。
この状況から考えれば、何があったかは簡単にわかる。



昨夜はとにかく楽しくて、俺はバーで酒をしこたま飲んだ。
そして、その後の記憶は全く無い。



(なんてことを…!)



自分自身に猛烈に腹が立った。
野々村さんには、偽りの恋人役を頼んだだけだったのに、こんなことをしてしまうなんて…



(あ……)



俺がこんなに取り乱している理由に、俺はたどり着いてしまった。



そう、俺は恐れているんだ。
野々村さんに嫌われることを。



こんなことをしてしまったんだ。
もう、会ってもらえないかもしれない。
仕事さえ断られてしまうかも。
そう思ったら、絶望的な気持ちになってしまった。



その時、野々村さんが動いた。
俺は咄嗟に目をつぶった。



野々村さんは起き上がり、服を着ているようだ。
俺はその気配を感じながら、狸寝入りを続けた。



やがて、野々村さんは服を身に付け、部屋を出て行った。
どういうつもりだ?
野々村さんの気持ちがわからない。
俺は頭を抱え、悔やむしか無かった。