(あ……)



いつの間にか俺の顔が綻んでいることに気付き、俺は急に恥ずかしさを感じた。
周りには誰もいないというのに、俺は小さな咳払いと共に、すました顔をした。



なんてことはない。
野々村さんからのLINEがあまりにも野々村さんらしくて…
それだけのことで、俺は微笑んでいた。



家事が苦手で、お弁当ばかり食べていて、でも、仕事には真面目で…
あぁ、真面目なのは、何も仕事に限ったことではない。
野々村さんは、そもそもが真面目な人だ。



(だけど、家事は苦手なんだな…)



いや、違う。
苦手なのは、料理だ。
家の中はけっこう片付いていたし、不潔ではなかった。
きっと、掃除は定期的にやってるんだろう。
それに、一人だと料理を作る気にはなかなかなれないんじゃないだろうか?
経費的なことを考えても、出来合いのお惣菜や弁当を買った方が安いのかもしれない。
家族でもいれば、野々村さんも料理をしてみようと思うかもしれない。



(家族……)



そんなこと思ったら、なぜだか、俺と二人で夕飯を食べてるシーンが頭に浮かんだ。
テーブルの上には、ご馳走が並び、俺たちは向かい合わせに座って…



おかしな想像をしたことが、また急に恥ずかしく思えた。