「あ、礼二、そのネクタイだがちょっと地味だな。
もう少し派手なものにした方が良い。」

「はい、シュウさん。」



今日も一日、無事に終わった。
ほっとした気分で控室に戻った時…



「シュウ…聞いたぞ。」

部屋に入って来たジョーに脇腹を小突かれた。



「聞いたって…何をだ?」

「なんだなんだ。
これだけ長い付き合いなのに、俺に隠し事をするつもりか?」

「隠し事だって?
本当にわからない。何のことなんだ?」

「ひかりちゃんとのことだ。」

「ひかり…?」



(あ……)



その時、俺の頭に浮かんだのは、慎二の顔だった。
そうか…慎二の奴が…



「なぁ、一体、どういう風の吹き回しなんだ?」

「どういうって…俺がひかりと付き合ったらそんなにおかしいか?」

「おかしいってわけじゃないけど…シュウ…本気なのか?」

「だから…本気だったらおかしいのか?」

「やけに突っかかるな。」

ジョーはそう言って笑った。



ひかりと俺が、偽りの付き合いをしていることは、カズと野々村さんしか知らない。
慎二は、マジに受け取ったんだろう。
それはともかく、ホストともあろう奴が、なんと口の軽いことか。



(あの野郎…!)



近々、慎二には説教をしてやろう。