(困ったな……)



確かに、梅酒のおかげで少しテンションは上がったような気はするものの…
かといって、どんなことを話せば良いのかわからない。
恋愛の話なんて、滅多に話さないから、きっかけが難しいよね。
なんとも気まずい沈黙が続く……



「美幸さん…あの…」

ようやく野々村さんが、話し始めてくれた。



「うん、何?」

「あの…最近、好きな方…っていうのか、気になる方はいらっしゃいますか?」

「えっ!?」

まさか質問されるなんて思ってなかったから、焦ってしまう。



「え…す、好きな人なんて……」



(あ……)



どうしよう?せっかくの機会だから、シュウさんのことをなんとなく聞いてみようかな?
シュウさんは好きな人とは違うけど、『気になる人』っていう点ではその通りだし…
もちろん、シュウさんのことだってことは、隠したままで…



「あの…好きっていうのとはちょっと違うんだけど…
少し悩んでることはあるんだ。」

「どんなお悩みですか?」

「えっと……だからね、さっきもちょっと話したけど…言いにくいことを言おうと思ったら、信頼関係が必要だって野々村さんが言ってくれたじゃない。
でも、信頼関係なんてそう簡単に出来るもんじゃないよね?
時間がかかるよね…」

そこまで話したところで、でも、シュウさんには時間がないんだって思ったら、急に胸がいっぱいになってしまった。