「お待たせ!」

そこへマイケルさんがやって来て、二人の顔はその途端、嬉しそうな表情に変わった。
なんだかんだ言いながら、この三人は妙に仲が良い。
ちょっとした家族みたいな感じ…?
マイケルさんは私の隣の席に着き、メニューを見ると素早く決めてオーダーした。



「女社長さんとの話し合いはうまくいったの?」

「もちろんだよ。
そんなことより、今、僕、ちょっとびっくりするもの見ちゃったんだ!……聞きたい?」

「君が話したいんだろ?
良いよ、聞いてあげる。」

マイケルさんはアッシュさんのその言葉に失笑しながら、小さく二回頷いた。



「あ…その前に…
今日は野々村さんはどうしたの?
一緒じゃなかったの?」

「一緒だったんだけど、急に用を思い出したとかでさっき別れたんだ。
送って行くって言ったんだけど、何か買い物してから帰るとかで…」

「買い物を…ねぇ……」

マイケルさんは、そう言いながら意味ありげな笑みを浮かべた。



「なんだよ、マイケル…
野々村さんがどうかしたのか?」

兄さんの質問に、マイケルさんは笑いを堪えられないように俯いて……



「実はね……僕、見ちゃったんだ。
さっき、野々村さんがこの近くを男性と歩いてるのを…」

「なんだって、あの野々村さんが男性と!?
そうか…用があるって言ったのはそれで…
でも、野々村さんにそんな相手がいたなんて驚きだね!」

アッシュさんは高い音色の口笛を吹いた。



マジですか?
私だって驚きだよ。
だって、野々村さんはおじいさんが好きなはずなのに…
あ、わかった……それって、道を聞かれたとかじゃ…



「一緒に歩いてたって……たまたま道を聞かれただけじゃないのか?」

さすがに兄妹…!
まさに、私が今考えてたことを、絶妙のタイミングで兄さんが口にした。



「違うよ、そんなんじゃない。」

「どうしてそんなことがわかる?」

「だって、野々村さんは、KEN-Gと一緒だったんだ!
なんだかすごく楽しそうに二人で歩いてたよ!」



(えっ…!?)



マイケルさんのその言葉に、私の切れ長の目が一瞬だけ丸くなった。