「あ、あそこにありますよ!」

大河内さんと別れた後、俺は野々村さんと近くの旅行代理店に向かった。



「思ったよりたくさんありますね。」

確かにすごい数のパンフレットだ。
よく考えてみれば、俺は代理店を通した旅行には行ったことがない。
今回も、ただ行き先を決めるために利用させてもらうだけだ。



「これは、なかなか決められそうにないですね。」

「そうですね。こんなにあったんじゃ…」

「いらっしゃいませ!」

不意に、店員に声をかけられた。



「ご旅行ですね。
いつごろのご予定ですか?」

「え…っと。
出来れば、ゴールデンウィークあたりに…」

店に頼む予定はなかったので、俺は困惑気味に返事を返した。



「ご夫婦、お二人でですか?」

「えっ!?」

店員がおかしなことを言うから、野々村さんが驚いている。



「ち、違います。
仲の良い友人たちと…」

「ご友人とですか。
ただ、今からですと、お宿の方がなかなか…しかも、大勢でとなると、かなり難しいと思います。
ご夫婦お二人だけならなんとかなりそうなのですが…」

「だから、俺達は……
また来ます!行きましょう!」

俺は、野々村さんの手を掴み、店の外へ出た。