(あぁ、どうしよう…)



気持ちが焦るばかりで、なかなかシュウさんの傍に行けない。



(……あ……)



私は、ふとポケットの中のなにかに気が付いた。



出してみると、それは、あの指輪だった。
以前、兄さんが買ってくれたペンダントと同じ優しいピンクの石の付いた、あの指輪。
不思議とシュウさんが興味を示したあの指輪だ。

私はそれをそっと小指にさした。



(どうかお願い…私に勇気を…!)



心の中で祈りを込めて、私は顔を上げ歩き出した。



「シュウさん…」

シュウさんは、何も言わずに私の方に振り向いた。



「わ、私もお話に混ぜていただいて良いですか?」

「あぁ、ひかりちゃん。
もちろんだよ。」

シュウさんではなく、ジョーさんが明るい笑顔でそう応えてくれた。



「あれ……」

シュウさんは早速私の指輪に気が付いたようだった。
どうして?
どうして、シュウさんはこの指輪に反応するんだろう?



「これ…ちょっと不思議な指輪なんです。
ある時、ポケットに入ってたのを偶然みつけたんですが、この指輪のこと、私は覚えてないんです。
多分、お母さんが買ってくれたんだと思うんですけど、いつ買ってもらったのかもまるで覚えてない…」

シュウさんは、私が話してる間も、ずっと私の指輪をみつめてた。



「……本当は、なにか、いわくつきの指輪じゃないのか?」

「いわくつき?」

「いや、変な意味じゃない。
ただ…なにか、とても大切なものじゃないのかって…」

そう言いながら、シュウさんは私の手を取った。
びっくりはしたけれど、以前みたいにはたいたりはしない。
シュウさんは、私の小指の指輪を、不自然な程、真剣な眼差しでみつめてた。