「アッシュ!」



高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、俺は目に付いたアッシュに声をかけ、彼の傍に近付いた。



なんで、俺はこんなにドキドキしてるんだ?
ただ、俺のタイプについて話をしただけなのに…



「あ、カズ、どうかしたの?」

「いや、別に…
楽しくやってるか?」

「もちろんだよ。」

他愛ない会話を交わしながらも、俺の頭の中はさっきのことでいっぱいだった。



『理想は、一緒にいて窮屈な想いを感じない人かな。
これが俺にとっては一番重要かもしれません。
あと…可愛いと思える部分がある人。
なんとかしてあげたくなる人……』



それが目の前の野々村さんにすべてあてはまると気付いた時、なんだか猛烈に恥ずかしくなった。
まるで、告白でもしてるかのような気分になって、恥ずかしくてたまらなくなって…
俺はアッシュをだしにその場を離れていた。



野々村さんはきっと変だと思っただろう。
まさか…気付かれただろうか?
いや、それ以前に…おかしいじゃないか。
俺はただ、好きなタイプを正直に答えただけだ。
その後で、そのどの点をとっても野々村さんにあてはまることに気が付いた。



(……ってことは、野々村さんは俺の理想の人だってこと?)



馬鹿な…
確かに野々村さんのことは信頼してる…
でも、それは恋愛感情とは違うはず。
彼女はファミリーと言えるような存在だ。
そう…彼女じゃない。
家族なんだ。



なのに、なぜ、こんなに俺は動揺してるんだ?



(なぜ?)



そうだ…たまたま、俺の理想に野々村さんが当てはまるって気付いてしまったからだ。
野々村さんは、唯一といっていい程、一緒にいて窮屈な想いを感じない人だ。
かくまってもらってた時、信じられない程リラックス出来た。
今までの彼女にそんな人はいなかった。
それに…野々村さんのあの性格はいやみがなくて純粋で、何とも言えない可愛げを感じる。
頼りないところもあるから、なんとかしてあげたくなる……



やっぱりぴったりだ。
野々村さんは、俺の理想にぴったりだ。



そう思うと、さらに心がざわざわとざわめいた。



(俺は…野々村さんが好きなのか…?)