(どうしてあんなことを…?)



さっきのことを思い返すと、顔から火が出そうな想いだった。



どうして、青木さんはあんなことをお訊ねになられたんだろう?
恥ずかしいけど…私には、嘘は吐けなかったから、本当の気持ちを答えてしまったけど…青木さんはどう思われただろうか?
あんなに笑ってらっしゃったから、機嫌を損ねたってことはないと思うのだけど、もしかしたら、あの笑いは私を憐れんでのこと?
希望もないのに、いい年をしたおばさんがまだ自分のことを想ってるって知って、笑いでもしなけりゃ間が持たなかった…とか??



少女の時からずっと思ってた。
相手の心の中が読めれば良いのに…って。
そしたら…真実のみがわかって、気が楽になれるのに…
皮肉なことに、私にはそれに類似した特殊な能力があるっていうのに、他人の心の中を知ることは苦手だ。
今日のことだって、本当に青木さんの気持ちがわからなかった。
だからこそ、あんなことを言って良かったのかどうか、言った後でずっと心配で…
馬鹿だな…言ってしまった後で心配なんてしたってどうにもならないのに…



今日の青木さんはどこかおかしかった。
普段、あんなのぼんやりされることはないのに、あんなにぼんやりされて…
何か、心配事でもあるんだろうか?
それとも、疲れてらっしゃるのか…
シュウさんが退院されたことでほっとなさったんだろうか?



そういえば、最近、青木さんには決まった方がいらっしゃらないのか、シュウさんと会われたり、私やKEN-Gさんを誘われることが多い。



(それとも逆?)



もしかしたら、また誰かに恋をされていて…
それで、私にもついあんなことを訊かれたんだろうか?
もしかしたら、ご自分の恋愛のお話がしたくて、それでそのとっかかりとしてあんなことを訊かれたのだとしたら…
だとしたら、私の答えは最悪だ…
あんなこと、言うべきじゃなかった。



(どうしよう?)



どうしようもなにも、今更もうどうしようもない。
私には自己嫌悪の溜息を吐くしかなかった。