「あ、野々村さん、お待たせしてすみません。」

「いえ、私もさっき来たところです。」



シュウの店に行った次の日、俺は野々村さんを食事に呼び出した。



「実は、美幸のことなんですが…」

「美幸さんがどうかされましたか?」

「俺の気のせいかもしれませんが…昨日、あいつ、やたらとシュウをみつめていたように感じたんです。」

「あぁ……」

野々村さんは、小さな声を出して頷いた。



「それは私も感じてました。」

「やはりそうですか。
それと、あの女と純平が部屋に来た時のことですが、美幸は言いましたよね。
純平と会ってたのは事実だけど、あいつとは友達みたいな関係だって…」

「は、はい。
私もあの言葉には少し驚きました。」

「やっぱりそうですか。
あいつ…どうしたんでしょう?
やっぱり、あの女のことが怖いんでしょうか?
だから、あんなことを…」

「私にもよくわかりませんが…でも、あれはその場しのぎに言われたことじゃないように思えます。
美幸さんは本当にそう思われてるみたいで…つまり、原因があのことであれなんであれ、純平さんへの気持ちが冷めたのは事実なんじゃないかって思うんです。」

「野々村さんもそう感じられましたか。」

「はい。」



やはり、野々村さんも同じ考えだった。
美幸の純平に対する想いは、確かに冷めている。



奇蹟が起きたのかもしれない。
二人の強い絆が、動き出したのだ。



「これは、良い傾向と考えて良いんでしょうか?」

「良いかどうかはわかりませんが、やはりお二人の魂は記憶を忘れてもまだお互いに惹きつけ合ってるんじゃないでしょうか?
青木さんがおっしゃった『成り行きに任せる』という方法が、正解だったのかもしれませんね。
私達がなにもしなくとも、運命は二人を引き寄せた…」

まさにその通りだ。
これは、運命の流れだ。
やはり、二人は放っておいても磁石のように惹きつけ合ってしまうんだ。