お風呂からあがって部屋に戻って来たら、もうけっこう遅い時間になっていた。
ふとスマホを見ると、純平君から着信が入ってた。



でも、私は電話をかけなかった。
かけたくなかった。



あの事件があって以来、なんとなく疎遠になって…
最近はメールも電話もほとんどしなくなってた。
いや、それはもしかしたら、私のせいかもしれない。
私がついつい素っ気ない返事をしたり、返事が遅れたり、しなかったりだったから…
以前、しばらく会わないようにしようって言ってから、なんだか純平君への想いみたいなものが冷めたのは事実だった。
あんな事件があったから、自己防衛本能みたいなものが働いてしまったのかもしれない。
またあんな怖い想いをするくらいなら…って考えてしまったのかもしれない。
だから、今もやっぱり電話を掛ける気にはならなかった。



そんなことよりも、私の心の中を支配していたのはシュウさんのこと。
まだ退院したばかりだっていうのに、あんなにお酒を飲んで大丈夫なんだろうか?
いや、大丈夫なはずなんてない。
大丈夫じゃないからこそ、あんな無謀な飲み方が出来るんだろう。
でも、それがわかっていても、私には何も言うことが出来ない。
私は何も知らないことになってるんだもの…
ジョーさんは、なんで止めてくれないんだろう?
そう思った時、その答えがわかった。
そうだ…あと一年の命だからこそ、ジョーさんはシュウさんに好きなように過ごさせてやりたいんだ。
だから、止めないんだって…
でも、本当にそれで良いんだろうか?
好きなように過ごすことが本当に一番良いことなんだろうか?
もしかしたら、お酒やたばこや夜更かしをやめれば、ほんの少しでも余命が伸びるんじゃないだろうか?
でも、たとえ少しくらい伸びたとしても、それが生きがいみたいな仕事をやめた代償だとしたら、それは意味がないようにも思える。



(やっぱり、このままが一番なのかなぁ?)