「美幸ちゃん…どうかしたの?
全然食べてないじゃない?」

「え…あぁ…今、食べるとこ。」

今朝のショックが大きすぎて、食事も喉を通らない。
夕飯の時間になっても少しもお腹がすかなかった。
でも、食べないとおかしいと思われるから、むりやりに料理を口に運んで…
だけど、まさに砂を噛むような感じで、味さえもよくわからない。



兄さんには言った方が良いんだろうか?
でも、兄さんとシュウさんはけっこう仲が良いから、シュウさんも言うつもりならそのうちに自分から話すはずだ。
だから、やっぱり私から話しちゃいけない。
野々村さんにもおじいさんにもやっぱりこれは言っちゃいけないことだと思う。
だけど、ひとりで抱えるには重すぎる秘密だ。



誰かに話したい。
話して、少しでもこの心の重石を軽くしたい。
でも、それは許されないこと…
シュウさんが自分から話さない限り、私が話しちゃいけない秘密…



「美幸…具合でも悪いのか?」

「え…?」

私の様子がおかしいことに兄さんも気付いた。
いけない、こんなことじゃ。
こんなじゃ、シュウさんにも気付かれてしまうかもしれない。
そうだ…明日だってお見舞いに行くんだし、そこで私の様子がおかしかったら、カンの良いシュウさんのことだもの…なにかを感じ取るかもしれない。



(……しっかりしなきゃ!)



「なんでもないよ。」

私は、また目の前の料理を無理矢理に口の中に押し込んだ。
そうだ、これからは私がしっかりしなきゃ…
シュウさんに気付かれないようにして、少しでもシュウさんを支えていかないと…!
めそめそしてる場合じゃない!