「そうじゃないだろ。今回のことは、運が悪かったとしか言えないと思う。
ホストだって、女と付き合ってる者はいっぱいいるし、結婚してる者だっている。」

「だけど、ホストはやっぱり普通の人とは違うから…」

「普通の人だって、こんな事件に巻き込まれる人はいるぜ。
どっちかっていうと、普通の方が多いんじゃないか?」

「そんなことは…」

「あると思う。
だから、気に病むな。」

俺がそう言っても、ひかりはショボくれて俯いたままだった。



「……純平のこと、好きなんだろ?」

ひかりはしばらく間を置いて、小さくこくりと頷いた。



「でも、純平君のこと、独占しちゃだめだったんだと思います。
純平君はいってみればアイドルみたいなものだから。」

「それは違う。
純平だって、何人もいるお客の中からひかりちゃんを選んだんだ。
その気持ちに嘘はないはずだ。
だから、その想いは素直に受け止めて良いと思う。」

ひかりは、何かを考えるようにじっと黙っていた。



「ホストだって人間だ。
客を好きになることだってある。」

「私も純平君のことは好きです。
でも……今回のことは本当に怖かった。
意気地なしなのかもしれないけど、こんな怖い想いをするくらいなら、もう会わなくて良いってそんな風に思ってしまいました。
私…やっぱりホストと付き合う覚悟が出来てなかったんだと思います。」

やはり、それほど怖かったのか…
俺は反射的に、ひかりの両手を握りしめていた。



「シュウさん……」

「ひかり……そう思うのは仕方ないけど…
どんな時にも俺が絶対に守るから…」

「え……!?」

ひかりの驚いたような顔を見て、俺ははっと我に返った。



「お、俺はあの店のオーナーだ。
俺にはお客を守る義務があるからな。」

そう言って俺は手を離した。



「だ、だから、何も心配はいらない。」

なぜだか心臓が飛び跳ねていた。
俺は、一体何を言ってるんだろう…
なぜ…ひかりの手を握りしめてしまったんだろう…?